謹啓 盛夏の候益々ご清栄のこととお慶び申し上げます。
このたびは、私の自費出版に際しましていろいろとお世話になり、まことにありがとうございました。
今回の出版は、私にとりまして初めてのことで、内心は不安で一杯でありましたが、お蔭様で期待以上の出来映えに大満足しております。
初出版を試みる者にとって費用は、気になるものの一つです。
実はこれまでにも数社に作品を応募し、ご好評と出版のお勧めをいただきましたが、その費用が御社の場合に数倍するもので、到底負担できる金額ではありませんでした。
それに比して御社の場合は、自動見積もりシステムによって何度でも繰り返し検討が可能であったため、安心感を持って企画を進めることができました。
しかも、これまで私が試みた数社の見積もりに比較して格段に低価格であり、体裁や紙質など事前に完成品をイメージすることが可能でありましたので、御社とマンツーマンで折衝しているような気安さがありました。
また私のように、何の素養もなく自費出版に挑戦するのには、相当に勇気が要ります。
製本の出来映えは御社にお任せするとしても、内容をどのように評価されるかはやはり一番気になるところです。しかも今回のように有償販売の形をとろうとする場合、なかなか決断がつきません。
したがって、事前に内容について専門的なご批評をいただくことができればもっと気軽に出版に踏み切れるのではないかと思います。
もちろん、それは作者に対する有償の選択肢としてご検討いただけたら結構です。
御社のご清栄と皆様のご健勝をお祈りいたします。
敬具 (追伸)
私は6年間にわたる自治会長の経験を通じて、組織を運営していく難しさを知るとともに、それを如何にして解決していくかという問題と取り組んできました。
作品の中でも触れましたように、私の地域の自治会は、五千世帯・一万二千人という大組織でありますが、感覚的にはまだまだ旧態依然たるものがあり、会員の中には不平不満が潜在しているという現状であります。
全国的にみても自治会の運営は、たまたま会員から推されたという「人望」だけでは解決できない複雑な問題に直面しています。けれども、これに対する適切な指導や助言をしてくれる機関はどこにもなく、行政は都合のいいときだけ利用はするけれども問題解決には関与することを避けてさえいるという状態です。
私もそのトンネルの中で出口を求めて悩み苦しみ、辿り着いたのが、人を組織し、導いていくために一番大切なことは「愛」であるという平凡な結論でありました。
この「岡山今昔物語」には、個々の問題をとりあげてその解決策をアドバイスするという一問一答の形式は採らず、自分自身が飾り気を払拭して、裸で会員と向き合うところに解決の糸口を求めようとするものであります。
とはいえ、素人の悲しさ、文才及ばずまだまだ不充分のそしりを免れませんが、これは単に「岡山」という限定された一地域のことではなく、どこの自治会の運営にも相通ずるものがあろうかと思っております。
私の拙い一文がそのような同憂の方の目にとまることがあれば、望外の幸せと思います。